営業職の二極化——年収が上がる人と上がらない人の分岐点
AI×即戦力シフトで年収格差が拡大する構造を解説。SaaS平均年収1,000万円超から停滞する営業まで、分岐点はどこにあるのか。
ジン
長くやってきたから、格差が広がっていくのが見える。
20年前は「営業は根性と体力」って言われた。今はそれだけじゃ戦えない時代。同じ「営業」でも年収が倍近く違う人が同じ世代にいる。その差は能力の差っていうより「どこに立ってるか」の差だ。
今日はその構造を、できるだけ正直に話す。
二極化の構造——何が年収を分けているのか
まず数字を見てほしい。
2023年時点で平均年収が1,000万円を超えるSaaS企業がある(有価証券報告書)。医薬品MRの平均は803万円。一方、従来型の法人営業で成果が出せてない30代後半の年収は400〜500万円台に留まるケースがある。
同じ「営業職」で最大2倍近い差。
この格差を生んでる構造的な要因は3つだ。
- ビジネスモデルの違い(成果連動の設計)
SaaS企業ではOTE(オン・ターゲット・アーニング)——ざっくり言うと「目標達成したらこれだけ払う」っていう成果報酬型の給与設計が広がってる。達成率100%で固定給+変動給のフルOTEを受け取り、120%達成なら1.5〜2倍の収入になる。
一方、従来型の営業は固定給中心。頑張っても頑張らなくても年収の差がつきにくい構造。
- 扱う商材の複雑さ
大型・複雑な商材(エンタープライズSaaS・金融商品・医療機器など)を担当できる営業は希少。「コンプレックスセールス」って呼ばれるこのスキルは、習得に時間がかかる分、市場価値が高い。
反対にシンプルで単価が低い商材の営業は、AIや安価な人材に代替されるリスクが相対的に高い。
- 成果の「言語化・再現化」ができるかどうか
感覚でやってた人は弱い。転職市場でもプロジェクト内でも、「自分の成果がなぜ出たのか」を言語化・再現化できる人が評価される。これがAI時代の本質的な差になってる。
年収が上がっていく営業の特徴
共通点は明確。俺が見てきた「上がっていく人」には3つのパターンがある。
パターン1: 成果を常に言語化している
売上を上げたとき、「なぜ取れたのか」を必ず振り返ってる。顧客の意思決定を促した一言・タイミングの読み方・競合との差別化ポイント——これを言葉にして蓄積してる人は、次の案件でも再現できる。
転職市場でもこの差は出る。「年間120%達成」って言える人はたくさんいるけど、「なぜ達成できたのか・どう再現するのか」を語れる人は少ない。
パターン2: 上位職と同じ視点で仕事をしている
「言われたことをやる」じゃなく、「なぜこの指示なのか」「自分ならどう設計するか」を考えながら動いてる。これが習慣になってる人は、自然にマネジメント・企画職への評価が高まる。
パターン3: AIツールを早期に使い始めている
AIを使ってる営業と使ってない営業の生産性差は、すでに2026年時点で開き始めてる。早く習慣化した人は「余った時間を戦略思考に使える」っていう複利がかかる。
セールステック市場の拡大(4,159億円→2030年5,170億円・xenoBrain 2025年予測)は、AIを使う営業の需要が増すことを示してる。
年収が停滞する営業のパターン
同じく「止まってしまう人」の共通点も書く。
パターン1: 「経験年数」で市場価値を測っている
「10年やってきた」って事実は経験だけど、市場価値とは別物。「10年で何を学んで、何を再現できるようになったか」が問われる。年数が価値に変換されてない人は転職市場で苦労する。
パターン2: 一つの会社・業界に特化しすぎている
一つの会社・一つの業界しか知らない営業は、外に出たとき「その経験、汎用性ないですよね」って見なされるリスクがある。意識的に「他の業界でも通じるか」を問い続ける姿勢が必要。
パターン3: プレイングマネージャーとして疲弊している
リクルートワークス研究所(2019年)の調査では、プレイングマネージャーが87.3%。プレイング業務が3割を超えるとチームの業績が低下するって結果が出てる。
プレイングマネージャーは「自分の数字を追いながらチームも見る」って二重負荷。この状態が続くと個人の市場価値向上に時間を割けなくなる。「自分の市場価値は上がってるか」を定期的にチェックしよう。
若手への影響——入口が狭まっている現実
年収二極化は中堅・シニア層だけの問題じゃない。若手の入口が変わってる。
数年前まで「未経験歓迎・研修充実」で採用してた企業が、今は「SFAの操作経験あり」「SaaS営業経験2年以上」を条件に出し始めてる。
なぜか。AIが反復業務を代替し始めたことで、「育てながら戦力化する」コストを企業が嫌がるようになった。即戦力採用へのシフトは、若手にとっては「最初の3年間」の使い方が将来の年収を決めるって意味だ。
若手が今すぐ意識すべきこと:
- 今の会社で「コンプレックスセールス(大型・複雑案件)」に触れられる環境を選ぶ
- AIツールを誰よりも早く使いこなして「AI活用できる営業」ってポジションを取る
- 日々の成果を言語化してメモしておく(3ヶ月後に振り返れる状態にする)
最初の3年間は「年収より経験の質」を優先するのが、長期的には最も年収を上げる戦略だ。
今いる場所から動くための基準
「転職すべきか、今の会社で頑張るべきか」——この問いに答えるための基準を3つ出す。
基準1: 今の年収は市場水準と比べてどうか
転職を考える前に、エージェントへの登録だけでもやってみてほしい。「あなたのスペックなら○○万円のオファーが来る可能性がある」って情報を持つだけで判断の質が上がる。
基準2: 今の会社での成長は続いているか
「成長実感がある」と「安定して働けてる」は別物。挑戦の機会が減って同じことの繰り返しになってるなら、市場価値は停滞してるかもしれない。
基準3: 自分の成果を「言語化して語れるか」
今すぐ「自分はなぜこの会社の営業として成果が出せてるのか」を3分で説明できるか試してほしい。語れないなら、まず言語化から始める。語れるなら、その言語化を面接で使うだけでいい。
格差は構造的に広がってる。でも構造を知れば、どこに立てばいいかが見える。
それが今日伝えたかったことだ。
あわせて読みたい
- なぜ営業は年収が上がらないのか——転職理由1位『給与が低い』の構造を読む
- SaaS営業と従来型営業——同じ『営業』で年収が2倍違う理由
- AIで消える営業、残る営業——5つのチェックリスト
- 転職で年収を上げた営業の共通点——平均+22万円の内訳を分解する
参考文献
- 各社有価証券報告書(2023年9月期)
- xenoBrain「セールステック市場レポート」2025年
- リクルートワークス研究所「マネジャーの仕事実態調査」2019年(プレイングMG87.3%・プレイング業務3割超でチーム業績低下)
- JACリクルートメント「職種別年収データ」(MR 803万円)
よくある質問
- Q営業職の年収二極化はいつ頃から始まりましたか?
- SaaS拡大とともに2018〜2020年頃から顕著に。OTEの普及で同じ営業でも年収差が拡大。AI普及後の2023年以降さらに加速。
- Q年収が上がりやすい業種・職種はありますか?
- SaaS・IT・金融・医薬品(MR)は高い傾向。MR平均803万円、SaaSトップは1,000万円超も。コンプレックスセールスができる人は業種問わず高評価。
- QAIに営業が代替されると言われていますが、本当ですか?
- 部分的には起きてる。テレアポ・定型メール・簡単な問い合わせ対応はAIに移行中。複雑な商談・利害関係者の調整は当面人間の強み。
- Q30代後半で年収が上がらない場合はどうすればいいですか?
- まず自分の成果を言語化できるか確認。なぜ成果が出たか・どう再現するかを語れるようにした上で転職市場に出てみること。
- Q若手営業が今後10年で市場価値を高めるにはどうすればいいですか?
- AIツールを使いこなす・コンプレックスセールスの経験を積む・成果を常に言語化する。この3つが揃うとAIに代替されにくい人材になる。
関連記事
営業の漠然とした不安を整理する——『このままでいいのか』に答える地図
営業の漠然とした不安の正体を構造的に整理する実践ガイド。転職すべきかの判断基準と、不安を行動に変えるステップをマイが等身大で語る。
営業キャリアの地図——20代・30代・40代でやるべきことが違う理由
年代別のキャリア戦略はハッキリ違う。20代は種まき、30代は選択と集中、40代は価値の再定義。転職率・年収データをもとに解説。
営業企画の平均年収847万円——なぜ『裏方』が最も稼げるのか
JACの847万円データを軸に、営業企画・営業推進・RevOpsの違い、高年収の理由、AI時代の価値向上、CROへのキャリアパスまで徹底解説。
ジン
41歳フィールドセールス VP
20年以上の現場経験。エンタープライズ大型商談の修羅場をくぐってきたから言える、長期視点のキャリア論。